株式譲渡における消費税の取り扱い|計算方法や仕訳・会計処理も解説

株式譲渡における消費税の取り扱い|計算方法や仕訳・会計処理も解説
この記事の監修:M&A専門家
四辻 弘樹
S M B C日興証券・みずほ証券の投資銀行部においてM&A、ファイナンス、I P O等に携わる。その後は上場企業のテモナにおいてCSOとして事業戦略、M&A、新規事業開発に従事。現在はM&Aアドバイザリーの他、資金調達支援、IPO支援に加えCFOとしての活動。

この記事では、M&Aの1つである株式譲渡に関わる消費税について詳しく解説していきます。

株式譲渡の重要な流れ、課税の内容まで理解できるように、税額に影響を与える課税売上計算式や、株式譲渡の仕訳・会計処理についても詳しく説明していきますので、確認しましょう。

株式譲渡とは?

株式譲渡とは?

株式譲渡とはM&Aの手法の1つで、株式を売り手から買い手へと譲ることで、会社の経営権を譲渡することを意味します。株式譲渡を行うことで、売り手側の株主(個人や経営者)は、株式の売却金額を受け取れます。売り手と買い手が株式譲渡契約書(SPA)を締結して、株式の対価の支払いが行われ、株主名簿の書き換えができれば完了となります。

株式譲渡の流れ

まず重要なのは、株式の譲渡制限の確認です。株式制限とは、株式売買する際に会社の承認を必要とする定めのことです。登記簿謄本を調べれば確認でき、制限の有無で手続き方法が変わります。譲渡制限が定められている場合、以下の手順で譲渡を進めます。

株式譲渡契約書を締結

通常、譲渡を進めるにあたって、対価の額をいくらにするか重要なことで、多くの時間と経費がかかります。さらに、親族間や親しい関係の取引先であれば、契約書を交わさない場合もあります。

実際、株式譲渡は様式契約ではなく口約束でも成立するため、法律的にも契約書は不要です。しかし、親しい関係だからこそ、争い事とならないように株式譲渡契約書を作成することを推奨します。

株式総会・取引役会での譲渡の承認

会社に譲渡承認請求を出したら、会社側の承認手続きに移行しましょう。取締役会設置会社においては、原則取締役会で承認を得ます。取締役会設置会社でない場合、株主総会の承認が必要です。

株主名簿の書き換え

会社の株主の名前、住所、保有株式数などが一覧になっている株主名簿があります。譲渡の際には、新旧株主が共同で名簿の書き換えの請求が必要です。近年は株式発行会社でない場合が多いため忘れがちな手続きですが、非常に重要です。

株式譲渡を進める手段

株式譲渡を行う手段としては、相対取引・市場買付け・公開買付け(TOB)の3種類あります。

相対取引

相対取引とは、買い手側が個人で、売り手株主に交渉をして株式譲渡を行う手法です。会社が未上場企業で株式譲渡を行う場合、相対取引しか手段がありません。譲渡価格は売り手、買い手株主がそれぞれ提示すると時間を要する可能性が高いため、同一価格で取引することが一般的です。

市場買付け

市場買付けは、上場している会社を対象に、直接株式市場から買い進める手法です。株価が安いタイミングで多くの株式を取得し、投資費用を抑えることが可能です。ただし、大量保有の開示により、株価暴落のリスクもはらんでいます。そのため、後述のTOBを利用する場合が多いといわれています。

公開買付け(TOB)

公開買付けは、個人を含む不特定多数の株主に対し、公告により買付けを勧誘し、市場外で株式買付けを進める手法です。市場外では5%を超える買付けには、TOBが義務付けられています。TOBを行う際には、現時点の株価に価格を上乗せし、高い株価で申し込みを勧誘することが一般的です。

株式譲渡のメリット

「売り手側のメリット」としては、売却益への税金が安く抑えられることです。株主が個人の場合、譲渡所得への税率は約20%で、事業譲渡よりも税金が安くなります。一方で、取引の主体が株主ではなく法人となる事業譲渡は、ここまで低い税率で売却とはなり得ません。

さらに、会社を存続し続けるため、強みのビジネススタイルや人材を引き継ぐための株式譲渡を行うことで、取引先の契約や従業員の雇用もすべて承継できます。事業譲渡に比べて独立性を担保でき、会社を長く存続できるのは大きなメリットです。

「買い手側のメリット」としては、売り手企業の株式を100%取得することで、会社の支配権をすべて有することが可能です。売却企業が上場企業であればすべての株式を取得することは難しいことですが、事業の一部譲渡を行ったり、その企業の株を保有することで発言権を持ったりできます。

株式譲渡のデメリット

「売り手側のデメリット」としては、株式50%以上を売却した時点で、支配権を失うことが挙げられます。株式譲渡でいえば、会社全体が取引対象のため、50%以上の株式を手放す場合、取締役の選任などの重要な決定権を実質失います。

また、別ケースとして、負債も財産の一部とみなされ、株式譲渡する際に、買い手側が負債を引き継いでもらうこともできます。しかし、あまりにもその負債が大きすぎる場合には、買い手がつきにくいデメリットも考えられます。

「買い手側のデメリット」としては、魅力的な事業だとしても、譲渡した会社が負債を抱えている場合でも、すべてを引き継がなくてはいけないことです。譲渡交渉の初期に、決算書等で負債を確認していても、後に精緻な財務実態の把握を進めるにつれて、帳簿に記載のない債務・債権が判明する例もあります。

買い手側は、こういった負債と、将来に見込める将来性をトータルに見極め、慎重に株式の買取を検討していかなくてはなりません。

株式譲渡と消費税

よく耳にする消費税とは、「消費」に対して課せられる税金のことを指します。商品・製品の取引に対して公平に課税されますが、社会政策的な配慮から非課税とされる取引もあります。

こういった譲渡の際に発生する消費税の負担者は「消費者(個人・法人)」ですが、消費税を納税する義務があるのは「事業者」です。流れとしては、消費者から支払われた消費税を一度、事業者が預かります。その後、事業者が支払済の消費税を差し引いた消費税額を計算して納付します。

株式譲渡の際の消費税は非課税?

株式譲渡の際の消費税は非課税?

「株式」とは、企業が資金調達のため、発行する証券のことを指します。企業は株式を発行し、個人や企業に購入してもらい、受け取ったお金を企業の資金として使用します。
「有価証券」とは、債券・手形・小切手などの財産的価値を持つ証券のことを指します。この有価証券の中には、「株式」も含まれます。株式を保有する個人・法人の称号が「株主」です。

株式譲渡と有価証券売却の課税は?

この株式譲渡、有価証券売却に、基本的には消費税は発生しません。しかし、ケースによっては課税となる場合もあります。

譲渡する際、株式の金額が高額な場合や、頻繁に売買を繰り返す場合などが挙げられます。また、事業譲渡を行う際にも、消費税が発生します。

株式譲渡と事業譲渡の違い

M&Aは他にも「事業譲渡」という手法があります。「事業譲渡」とは、会社の一部の事業のみ(事業に関わる資産、人材、技術、取引先も含む)を売却する手続きを指します。この株式譲渡と事業譲渡の違いの1つが税金です。

この両者では、発生する税金が異なります。事業譲渡の際に消費税を納付するのは売り手側ですが、実際に負担を負うのは買い手側です。

株式譲渡の際に消費税が発生する場合

株式譲渡の際に消費税が発生する場合

上記でも触れた通り、株式譲渡を行う際に消費税が発生する場合があります。この章では、株式譲渡でかかる税金について詳しく説明していきます。

売却側に発生する税金

株式譲渡(売却側)にかかる課税は、「所得税」です。事業譲渡(売却側)にかかる課税は、「法人税」と「消費税」です。

事業を売却・譲渡をした際には法人税が発生します。これは、事業を売却し、その代金を受け取るのは譲渡側の企業であるためです。

個人が個人に対して売却した場合の課税

個人の売り手が適正価格で売買したときは、所得税が課税されます。また、適正価格より低額で売買したときも、所得税が課税されます。もしも、適正価格より高額で売買した場合は所得税、さらに超える金額は贈与税が課税されます。

個人の買い手が適正価格で売買したときは、非課税になります。また、適正価格より低額で売買したときは、時価価格と購入価格の差額に基づき、贈与税が課税されます。そして、適正価格より高額で売買したときは、非課税になります。

個人が法人に対して売却した場合の課税

個人の売り手が適正価格で売買したときは、売却益額に対して所得税が課税されます。また、適正価格より定額で売買したときは、時価の2分の1未満の価額で売買した場合、所得税が課税されます。そして、適正価格より高額で売買した場合は、所得税、さらに贈与税が課税されます。

法人の買い手が適正価格で売買したときは、非課税になります。また、適正価格より低額で売買したときは、時価価格と購入価格の差額に基づき、法人税が課税されます。そして、適正価格より高額で売買したときは、時価価格を超える金額は寄付金扱いとなり、損金不算入とみなされ、法人税が課税されます。なお、株式の売却益に対しては、消費税は課税されません。

株式譲渡した際に発生する消費税の計算方法

株式譲渡した際に発生する消費税の計算方法

課税期間中に行った資産譲渡などの対価の合計額のうち、国内で行った課税資産譲渡などの、対価の合計額を占める割合を課税売上割合といいます。かんたんに説明をすると、消費税額に関わる数値を求める計算式です。

課税となる取引で出た売上高(課税売上高)と、課税非対象となる取引によって出た売上高(非課税売上高)の合計内で、課税売上高が何%を占めるかを求めていきます。

課税売上割合の計算式

課税売上割合=課税売上高/(課税売上高+非課税売上高)

株式譲渡の際の消費税額は課税売上割合を計算して求めます。この課税売上割合は、数値が低くなるほど消費税額が増える特徴がみられます。「課税売上高」は課税取引の際に発生した売上高の合計を、「非課税売上高」は非課税取引の際に発生した売上を表します。

課税売上割合と消費税の関係性

課税売上割合を多くするには、株式の取引額を少なくしていく必要があります。しかし、株式会社や有価証券売却の金額が大きくなるほど、計算式の分母が大きくなり、課税売上割合は小さくなるため、消費税が膨らんでいくのです。

株式譲渡の消費税の仕訳・会計処理

株式譲渡の消費税の仕訳・会計処理

譲渡企業側の会計処理の際には、取得原価を控除し、売却対価との差額を売却損益に仕訳し、損益計算書上に計上します。さらにこの損益計算書上には、譲渡に要した支出額を、事業年度の費用として計上します。

譲渡側の仕訳・会計処理

株式を保有していた譲渡側は、「子会社株式・関連会社株式・投資有価証券」などの勘定科目から取得原価を控除し、売却対価との差額を売却損益に計上します。

譲受側の仕訳・会計処理

譲受側も、譲り受けた株式によって会計処理が異なり、以下の点に注意が必要です。

譲渡企業の支配権を取得した場合、勘定科目は「子会社株式」で計上します。また、譲渡によって譲り受けた資産や負債を再計算し、時価純資産額を上回った額を「のれん」として仕訳します。

過半数の議決権の取得とは至らないものの、重要な影響力を取得した場合、「関連会社株式」という勘定科目に計上します。また「子会社株式」「関連会社株式」にも該当せず、支配権も影響力もないと考えられる場合、「投資有価証券」という勘定科目に計上します。

株式譲渡で確定申告は必要か?

株式譲渡、また不動産売却、先物取引、山林所得などを行った際には、他の所得と区分して税金を計算する「申告分離課税」となり、確定申告をしなくてはなりません。しかし、年間を通して、株式譲渡の損失が出ている場合には、給与所得以外の所得が20万円以下になるので、確定申告の必要はありません。

また別例として、確定申告書をした方がお得なケースもあります。それは、「上場株式等」の譲渡損失がある場合です。損益通算と繰越控除が適用されます。この場合、確定申告をすることによって、「上場株式等の譲渡損失に係る損失通算及び繰越控除」という特例の控除を受けられます。

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株式譲渡における消費税 まとめ

株式譲渡における消費税 まとめ

解説を読むと、消費税を抑えるために課税売上割合を調整するなど、内容を詳しく知ることが大事だとおわかりいただけたでしょう。株式譲渡を行うメリットは税金が抑えられるだけではなく、会社の継続・発展までをも担う、大事な手段でもあります。その際には、売り手と買い手の間に第三者を入れることが、譲渡をスムーズに進めるコツでもあります。

ウィルゲートM&Aでは、9,100社を超える経営者ネットワークを活用し、ベストマッチングを提案します。Web・IT領域を中心に、幅広い業種のM&Aに対応しているのがウィルゲートM&Aの強みです。M&A成立までのサポートが手厚く、条件交渉の際にもアドバイスを受けられます。

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