法務DD(デューデリジェンス)とは?目的や調査項目、費用相場を解説

法務DD(デューデリジェンス)とは?目的や調査項目、費用相場を解説

法務DD(デューデリジェンス)は、M&Aで買い手企業が行う売り手企業を精査するプロセスの一分野です。その名が示すとおり、主に法律的な内容を扱います。

この記事では、法務DDの目的や調査項目、費用負担など、よくある疑問について解説します。

そもそもDD(デューデリジェンス)とは?

そもそもDD(デューデリジェンス)とは?

DD(Due Diligence=当然払うべき注意の意)は、M&Aの際に、投資対象となっている売り手企業の財務や法務、経営状況などを精査する、買い手側のリスクヘッジのためのプロセスです。

法務DD(デューデリジェンス)とは?

法務DD(デューデリジェンス)とは?

法務DDは、財務や人事、ITなど分野ごとに行われるデューデリジェンスの一分野で、法律的な面からのリスクを洗い出します。給与の支払いが雇用契約どおりに行われているか、特許権や所有権などにかかわる訴訟対象になってはいないか、適切な許認可申請や登記が行われているか、などについて精査することになります。

法務DD(デューデリジェンス)の目的と必要性

法務DD(デューデリジェンス)の目的と必要性

法務DDに限らず、デューデリジェンスは買い手企業が行うものです。M&Aに際して、事後にリスクが顕在化して損害をこうむることを避けるためです。法務DDは特に法律的な面での問題点を精査します。

もしも見過ごせないような重大な法的なリスクが露見した場合には、M&Aの案件自体がブレークすることもあります。また契約において、売り手側にコンプライアンスを求める条件をつけたり、買収価額に対してリスクを考慮した減額を求めたりすることもあります。

法務DDはM&Aの可否を見定める重要な情報を提供するものであり、買い手企業が法的リスクにさらされ、経営に重大な影響を及ぼすことを回避するためのものといえます。

法務DD(デューデリジェンス)のチェック項目とは?

法務DD(デューデリジェンス)のチェック項目とは?

法務DDで対象となるのは法律にかかわることです。とはいっても、会社というものは契約から許認可、取引の実際、就業状況などありとあらゆる場面で法律がかかわってきます。したがってそのチェック項目も非常に多岐にわたりますが、ここでは主に8つを挙げます。

項目1:基本的事項

これは、法務DDの項目というよりも、それを進めるうえでの基礎的な理解をするための項目といえます。法務DDを進める上で売り手企業の基盤やガバナンスの特徴などを理解しておくためのものです。

会社の沿革や商業登記の内容、株主の状況や株式の種類とその数(発行総数や議決権株式数など)定款や役員体制などのガバナンスについて、組織、許認可等の状況、過去のM&Aの経歴など、売り手企業の在り様を把握しておきます。

項目2:資産、債務

資産や債務は会社の企業価値を図る上でのベースとなるものです。財務諸表等によって明示されているものをそのまま鵜呑みにしては、法務DDとしては失格です。

資産として確認を要するのは不動産、リースや賃貸も含む動産、知的財産権、金融資産などが考えられます。所有権を保有している資産はそれほど問題にはなりません。ただ担保となっている場合もあり、資産価値として調整が必要な場合があります。またリースや賃貸はM&A後にも継続契約できるかの確認が求められます。

不動産は不動産登記簿謄本で所有権の帰属と担保状況の確認を行います。動産はその占有状態や固定資産台帳への記載、譲渡担保の有無など、必要に応じてヒアリングもしながら確認します。特許などの知的財産権は、登録者の正誤、実施権者の存否、質権設定の有無などを確認するために、特許証や特許登録原簿などを精査します。

負債の面では、借入金の有無及び金額、買掛金や未払い金の確認などが求められます。債務保証など簿外債務がある場合もありますので、ヒアリングなどで明らかにしておかなければなりません。

こうした債務面は財務DDの担当分野でもありますが、特に債権処理の適切性や時効等の信憑性の確認などについて、財務DDの担当者と協力しながら進めることになります。

項目3:株主、株式

株式譲渡など株式の取得によって経営権の掌握を目指すM&Aの場合、株主が誰なのかは非常に重要です。売り手企業の株主の状況、特に少数株主がどうなっているかは確実に把握しておかなければなりません。少数株主の反対でM&Aが頓挫することも珍しくはないからです。

適切な手続きのもとで株主が存在しているか、株主の構成や株主数が変動する要因ともなる転換社債の状況も確認が必要です。また非公開会社にあっては、譲渡制限付き株式が適切に扱われているかも精査しておかなければなりません。

こうした確認、把握が正確でないと、せっかく多額の資金をつぎ込んでもM&Aの成果が得られなくなる可能性さえあります。

項目4:契約

契約内容を精査することは、会社の資産状況を知るうえでも重要です。売り手企業が持つ債権、債務が明確になるからです。

調べるべき契約は、売買契約、取引の基本契約、業務委託やライセンス契約、賃貸借やリース契約などが考えられます。すべてが文書化されているとは限りませんから、必要に応じてヒアリングなども行いながら確認していきます。

契約に不利な内容や違法な内容が含まれていないかを確認することも大切です。しかしここでさらに重要なのは、これらの契約がM&A後も継続されるかどうかの確認です。特に重要な仕入先との取引契約が結べないとなれば、M&A自体が失敗になりかねません。

COC(Change of Control)条項を含む契約では、契約の当事者の一方に支配権の変更があった場合、他方当事者に解約の権利が付与されていたり、必ず他方当事者に事前通知したりすることが盛り込まれています。この場合はM&A実施前に、速やかに対応する必要があります。

項目5:人事、労務

雇用契約の締結状況やその履行状況を確認し、労働関係法令の違反の有無や労使関係の状況、労働争議や従業員間の法的トラブルの発生の有無などを精査します。人事DDが主に担当する分野ではありますが、特に労働条件や退職、解雇にかかわる法的問題、ハラスメントなどの職場トラブルなどが重点になります。

M&A後も従業員の雇用は継続される場合が多く、後々になってトラブルが大きな問題となって離職の多発などを招けば重大な損失リスクとなります。売り手企業の雇用の現状を捉えておくことは重要です。長時間労働や未払い残業代など、法令違反の可能性があるものは特に慎重な精査が必要です。

項目6:コンプライアンス

各種の関連法令をきちんと遵守しているか、許認可等の適切な取得、運用が行われているか、反社会的勢力との関与はないか、などは重要です。法令については業務に直接関係するもののほか、会社法、税法、労働関係法などについても確認が必要です。

M&A後にコンプライアンス上の問題が発覚すれば、それは大きなイメージ毀損につながります。内部的なことに関しては注意が及んでおらず、個人情報保護の不徹底や下請けに対する不公平な処遇など、確認を要する法令の範囲は多岐にわたります。

許認可等については、M&A後に承継できるのかも確認が必要です。承継できない場合は、再申請、再取得が必要になりますが、時間もかかることなので、余裕を持った対応ができるように早めに動くことが肝要です。

項目7:訴訟

売り手企業が訴訟を抱えている場合、大きな法務上のリスクとなり得ます。現在進行中のものがあれば、その請求額や勝訴の見込みなど、詳細な内容まで調査します。

また今後紛争に発展しそうな潜在的な案件はないか、過去に裁判となった案件はないかなども精査していきます。過去の裁判事例は、今後再発の危険がないかも重要な調査項目となります。

特に、時間外労働や賃金の未払い、従業員等関係者の不祥事、知的財産権の侵害、取引先等との契約不履行、その他不法行為などは、M&A後の大きなリスクにつながりやすいものです。

場合によればM&A自体もブレークしますし、そこまで至らずとも訴訟が長引けば多大な支出を強いられ、経営に影響することも考えられます。

項目8:環境

企業には環境保全に対する大きな社会的責任が課せられています。不動産や工場施設などを承継する場合には、こうした環境面の対応を確実に把握しなければなりません。土壌汚染防止法や大気汚染防止法など環境法に抵触するような問題がある場合、承継した不動産等を使用できない可能性もあります。

M&A後にこのような問題が発覚すれば、土壌の浄化など環境の改善作業の費用は、いうまでもなく買い手側の負担となります。この負担は場合によっては莫大なものになり、大きな損失となりかねません。

法務DD(デューデリジェンス)の手順と流れ

法務DD(デューデリジェンス)の手順と流れ

法務DDは多くあるデューデリジェンスの一分野です。経営上の取り決めにかかわる精査が多いので、資料をもとに行う部分が比較的多くはなりますが、手順は他の分野とほぼ共通しています、5つのステップとして解説します。

1. 体制整備

まず法務DDを行う体制を整えます。法律に関する専門知識が必要な業務ですので、弁護士などの専門家に依頼するのが一般的でしょう。しかし、法務DDの経験を持つ企業などでは、社内に専門的知識を持ったスタッフを擁していて、そのメンバーに行わせる例もあります。

しかし、多岐にわたる法律の知識を駆使して、遺漏なくリスクを洗い出すには、やはり専門家に依頼するのが安全です。弁護士といえども、M&Aに不慣れな場合にはうまく進められないこともあります。M&A仲介会社を通すなどして、より専門性の高い人材を求めていくことが賢明です。

2. 資料開示請求

法務DDでまず取り組むことは、売り手企業に対する資料開示請求です。売り手企業としては機密事項に関する内容も含まれるので、守秘義務を課せられた法律事務所などを開示先として指定するのが一般的です。専門家の助言を得ながら、リストアップした調査項目に従い、必要資料のすべてを請求します。

3. デスクトップDD

開示された資料をもとに、分析を進めることをデスクトップDDと呼ぶことがあります。まさに資料のみを相手に机上での検討となります。この段階で不足した資料があれば、再度資料開示請求を行います。前述のとおり、売り手側から進んで資料提供することはないので、確実に資料を確保しながら検討を進めます。

この段階ではディールブレーカー(M&Aの阻害要件)を把握することと、事業継続性への影響を明らかにすることが重要です。ガバナンスの観点からの企業の存続性、許認可等の継続可否、事業等におけるコンプライアンス違反、リスクの影響度、M&A自体の合法性、などが観点となります。

4. マネジメントインタビュー、現地調査

資料分析の結果を踏まえて、経営者等との面談(マネジメントインタビュー)を実施します。資料だけからは精査できなかった内容について確認していきます。相手もいる作業ですので、延々と続けることはできません。ポイントを絞って、引き出すべき情報を確実に得る必要があります。

必要に応じては、売り手企業の実際を見て確かめる場合もあります。従業員などに知られると情報漏えいの可能性もありますので、あくまでも秘密厳守を意識して行います。

5. 条件、価額への反映

法務DDの結果を踏まえてM&A自体の進捗の可否について判断します。重大なリスクなどがあった場合は、収益性や企業価値への影響を数値化してとらえ、買収価額の交渉金額を提示します。他分野のDDとの兼ね合いもあるので、あくまでも交渉可能な金額の範囲として設定することが一般的です。

M&Aの進捗が可となり、妥当な買収価額や付帯条件が合意されれば最終契約の締結へと進み、法務DDの役割は完了します。

法務DD(デューデリジェンス)の費用相場

法務DD(デューデリジェンス)の費用相場

法務DDは外部の専門家に依頼することが一般的です。他分野と横断的にかかわる法律的な精査も多く労力を要することから、一般にその手数料は高額で、100万~500万円といわれています。対象が子会社や関連会社などにも及ぶ大規模なものになると、数千万円に及ぶこともあります。

他分野とのDDとの兼ね合いも踏まえながら、費用負担をよく考えて依頼する必要があります。

法務DD(デューデリジェンス)を行う際の注意点

法務DD(デューデリジェンス)を行う際の注意点

法務DDを行う際は、資料開示請求をして関係資料の提出を求めるわけですが、逆にいえば請求しない資料は提出されません。売り手企業とすれば、できるだけ不利になる可能性がある資料は出したくないので、少しでも疑念がある部分については再請求しなければなりません。

提出された資料がすべてだと思いこむことなく、精査を進める注意が必要です。

会社売買・M&A相談ならウィルゲートM&A

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法務DD(デューデリジェンス) まとめ

法務DD(デューデリジェンス) まとめ

法務DDは、思わぬ法的リスクから企業を守る重要なステップです。ここをおろそかにすれば、M&Aのねらいを達成することは難しいでしょう。しかしその進め方は高度に専門的で、高い実務能力を必要とします。

進め方に少しでも不安があるのなら、ぜひウィルゲートM&Aの無料相談をご利用ください。

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