株式譲渡の際の支払調書とは?必要な手続きや記載項目を解説

株式譲渡において課税の適正確保を図るため提出が義務付けられている「支払調書」は、手続きの方法や流れが複雑です。
この記事では、支払調書の手続き時にあわせて提出が必要な「支払調書合計書」も含めて、記載項目や記入例などについて解説していきます。
株式譲渡の際の支払調書とは?

支払調書とは、所得税法・相続税法・租税特別措置法・内国税の適正な課税の確保を図るため、提出が義務付けられている税務署へ提出する法定調書の一つです。全部で約60種類ある決定調書は、代表例として従業員の給与・役員報酬に関する「給与所得の源泉徴収票」や、報酬・投資信託の分配金支払いに関する「支払調書」があります。
支払調書は、所得税法第204条第1項・第174条第10号・租税特別措置法第41条の20により、年間5万円以上の報酬を個人に支払った場合の提出義務範囲が規定されています。法人に支払われる報酬・料金・支払金額が源泉徴収の限度額以下でも、「支払調書」の提出義務の範囲内である場合は提出しましょう。
株式譲渡の際は、譲渡企業が上場であるか非上場であるかに関係なく「株式等の譲渡における対価等の支払調書」の提出が必要です。弁護士や税理士への報酬・作家などに原稿料の支払いがあるケースなどに、毎年1月31日を原則期限として税務署への提出が義務付けられています。
国税庁は「株式等の譲渡における対価等の支払調書」に意味付けられている「株式等」について、以下のように示しています。
株式等の譲渡における対価等の支払調書の提出対象となる株式等
- 株式(株主または投資主となる権利、株式・新株予約権の割り当てを受ける権利を含む)
- 特別な法律による設立法人の出資者の持分
- 合名会社・合資会社または合同会社の社員の持分
- 協同組合等の組合員または会員の持分・その他法人の出資者の持分
- 協同組織金融機関の優先出資に関わる法律に規定する優先出資
- 協同組織金融機関の資産の流動化に関わる法律に規定する優先出資
- 社債的受益権
- 投資信託の受益権
- 特定受益証券発行信託の受益権
- 公社債
株式譲渡は、譲渡側保有の株式を譲受側が対価を支払うことで成立する取引です。株式譲渡を有償で行う場合は譲渡側に住民税・所得税・復興特別所得税が課せられます。株式譲渡を無償あるいは時価の1/2未満で行う場合は譲受側に贈与税が課せられます。
課税対象者は確定申告で税額を申告し、期限内に納税しましょう。株式譲渡が行われたことを「支払調書」にて報告し、これらの税金の申告内容が正確であるか確かめます。
株式譲渡の際の支払調書の提出先

「株式等の譲渡における対価等の支払調書」の提出先は税務署です。他の提出範囲の法定調書と決定調書の合計表を添付し、翌年の1月31日までに提出しましょう。
法人税や所得税の申告は、提出期限を超過すると延滞税や無申告加算税などが課せられますが、「支払調書」を含む法定調書は提出期限を超過しても延滞税や加算税は課せられません。
しかし、所得税法第242条5号で定められている「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられる可能性には注意が必要です。追徴課税が行われませんが、提出期限を過ぎないよう準備は計画的に進めましょう。「支払調書合計表」の未提出や虚偽記載の場合も同様です。
納税地を所轄する税務署は、国税庁ホームページ「組織(国税局・税務署等)」で調べると間違いありません。
株式譲渡の際の支払調書の記載項目

「株式等の譲渡における対価等の支払調書」各項目に、株式譲渡取引当事者の情報や取引に準ずる内容を記載します。支払調書の手続きを行う際には、「株式等の譲渡における対価等の支払調書合計書」の提出も必要です。年末調整でも提出を求められる「支払調書」「支払調書合計書」の記載項目についてぜひ参考にしてみてください。
株式等の譲渡における対価等の支払調書
- 支払または交付を受ける者の現況の住所(居所)および所在地
- 支払または交付を受ける者の氏名または名称
- 個人番号および法人番号
- 支払者または交付者の名称および法人番号
- 交付の取り扱い者の所在地
- 交付の取り扱い者の所在地および法人番号
- 区分
- 番号
- 名称または銘柄
- 支払または交付確定年月日
- 事由
- 株数(口)または額面金額(千円)
- 支払金額または交付金額(千円)
- 源泉徴収税額(千円)
平成28年1月1日以降、各支払調書に個人番号または法人番号を記載する項目が設けられました。M&Aによる株式譲渡は譲渡者が個人である場合が多いため、譲渡企業の経営者の個人番号を記載しますが、取引相手とはいえ個人番号を教えてもらうのは難しいケースもあります。相手の個人番号がわからない場合は、空欄のままでも問題ありません。
記入の際の注意点としては、「支払調書」を税務署ではなく個人の支払先に控えとして渡す場合は、個人番号は記載しないことが挙げられます。さらに、個人番号が必要であるが不明という理由による「支払調書」の未提出や虚偽内容の記載は罰則の対象となるので注意しましょう。
株式等の譲渡における対価等の支払調書合計表
- 提出者の所在地
- 提出者の氏名または名称および法人番号
- 代表者の氏名および代表印
- 合計表作成の担当者氏名
- 区分(個人一般分・法人分・個人株式交換分)
- 支払金額・支払件数・源泉徴収税額
株式譲渡の際の支払調書の手続き方法

株式譲渡の際の支払調書の手続きを行う際には、「株式等の譲渡における対価等の支払調書」と「株式等の譲渡における対価等の支払調書合計書」の2つの書類を提出します。
記載要領・申請書様式は国税庁ホームページよりダウンロードできます。ダウンロードや印刷が難しい場合は最寄りの税務署から用紙を受け取りましょう。
株式譲渡の際の支払調書の提出は株式譲渡が行われた翌年1月31日までに、以下の内容に沿って作成した支払調書を提出します。複雑な手続きが必要になるので、事前に把握しておくとスムーズでしょう。
株式譲渡の際の支払調書の手続き内容
- 概要:株式等の譲渡の対価等の支払調書
- 手続き根拠: 所得税法第225条第1項第10号・第11号
- 手続き対象者:国内で株式等の譲渡の対価の支払をする法人・証券会社または銀行
- 提出時期:翌年1月31日(特例も有り)
- 提出方法:合計表を添付した支払調書を送付または持参
- 手数料:手数料無料
- 提出先:納税地等を所轄する税務署長
- 受付時間:08:30〜17:00
- 相談窓口:最寄りの税務署
「株式等の譲渡における対価等の支払調書」を含む法定調書は、e-Taxでの電子申告も可能です。e-Taxには申請書の様式はもちろん送信機能まで備わっているため、ダウンロードと持参の必要がありません。
平成30年度の税制改正により、令和3年分以降の申告から法定調書の電子申告義務化が法定調書ごとに「1,000枚以上ある場合」から「100枚以上ある場合」に引き下げられました。該当事業者はe-Taxを使用した送付方法か光ディスクなど(CD・DVDなど)を使用した方法のみで提出しなければなりません。
株式譲渡の際の支払調書の記入例

株式譲渡の際の支払調書には細かい記載項目があります。各記載項目の記入例を紹介します。
- 「支払を受ける者」の欄:支払先の氏名や法人名を記入
- 「区分」の欄:弁護士・税理士報酬、原稿料・さし絵料等といった名称で報酬・料金・支払先業務内容を記入
- 「細目」の欄:弁護士・税理士報酬の場合は事件名、原稿料・さし絵料では支払い回数などを記入
- 「支払金額」の欄:原則、当該年度で確定している消費税を含めた支払合計額を記入
- 「源泉徴収額」の欄:当該年度中に源泉徴収するべき所得税と復興特別所得税の合計額を記入(支払調書を作成する時点で未払いにより源泉徴収できていない場合は、未徴収税額も含めるため未払い額と未徴収額を内数として併記)
- 「支払者」の欄:報酬や料金を支払う事業者の住所・会社名など名称または氏名・ 電話番号・法人番号または個人番号を記入(個人の支払先に控えとして渡す場合は、個人番号を記入しない)
基本的に「支払調書」は税込の金額を記入しますが、例外的なケースもあります。消費税欄・摘要欄が別にある場合には、税抜金額・別途消費税の金額の記入に注意しましょう。
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株式譲渡を行った際に税務署へ提出する決定調書の一つである「支払調書」は、国税庁が示す細かい項目に沿って正確に作成しなければなりません。
高い専門性と多くの実績を持ったウィルゲートM&Aは、丁寧なサポートにより必要書類の不備なく、スムーズに株式譲渡を進めるために抜擢な仲介会社でしょう。仲介手数料や着手金が不要の完全成功報酬制であり、無料相談も可能なので気軽に相談できます。株式譲渡を検討中の方はぜひご活用ください。
株式譲渡の支払調書 まとめ

株式譲渡は取引自体の交渉や手続きが複雑であるため、税務署への提出書類まで気が回らないこともあるでしょう。申告内容の不備や、提出期限を守らずに未提出となってしまうと罰則の対象となってしまう恐れもあります。記載項目や間違えやすい注意点、手続き方法などについて事前に理解しておくと戸惑わずに行えるでしょう。
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