法人の廃業費用はいくら?手続きの流れや期間、タイミングを解説

この記事の監修:M&A専門家
四辻 弘樹
S M B C日興証券・みずほ証券の投資銀行部においてM&A、ファイナンス、I P O等に携わる。その後は上場企業のテモナにおいてCSOとして事業戦略、M&A、新規事業開発に従事。現在はM&Aアドバイザリーの他、資金調達支援、IPO支援に加えCFOとしての活動。

会社の将来の発展や事業継承が難しいと判断した場合、廃業を選択する経営者も少なくありません。多くの経営者にとって廃業は初めての経験であり、どのくらいの期間が必要か、廃業にかかる費用や手続きの仕方などは未知の世界であり、廃業を決めてもどのように取り掛かればいいのかわからない人も多いでしょう。

この記事では、廃業の費用や手続きの仕方などについて詳しく解説します。

会社の廃業とは

会社の廃業とは

中小企業白書2021年版の資料によると、2014~2016年の非一次産業の廃業数は約814,000件となっています。約7.1%の企業が廃業していることになります。廃業する企業は、規模の小さいところが多い傾向にあります。廃業する理由は、自社の将来性や後継の問題、または新事業立ち上げのためなどさまざまです。

廃業とは、企業の事業活動を自主的に停止することをいいます。買掛金や借入金はすべて弁済し、従業員には退職してもらい、株主総会で解散決議と清算結了を確認して登記します。

会社を廃業することになった場合、解散手続きを経て廃業します。個人事業主の廃業の場合は、廃業届や事業廃止届出書、青色申告停止届などを提出しますが、法人で企業を運営している場合は、法定の解散手続きが必要になります。

廃業と倒産、破産の違いは?

廃業に似た言葉で、倒産や破産などがあります。それぞれの違いを見ていきましょう。

会社が倒産する場合、事実上の倒産と法律上の倒産があります。事実上の倒産とは、企業の資金繰りが悪化するなどして中小企業などが事業活動を停止して、その後再開する見込みはなく、従業員への賃金の支払い能力がないと労働基準監督署長が認定した場合をいいます。一方、法律上の倒産とは、破産法や会社法、民事再生法、会社更生法などの規定にある破産や特別清算、民事再生、会社更生などが該当します。

廃業と倒産の異なる点は、廃業は経営者自らが事業活動を停止することを決定しますが、倒産は経営者自身の意思で決定して行うものではないところにあります。

また、破産も資金繰りが悪化するなどの理由で、債権者への支払いができなくなったときに行うものです。破産は、企業が債務者の所有する財産すべてを清算して金銭に交換し、債権者に公平に分配するために行います。倒産と同じように経営者自身の意思で行うものではなく、廃業とは違います。

倒産と破産はどちらも事業活動の継続が難しくなり行うもので、同じように見えますが、倒産する会社すべてが破産しているとはいえません。

会社の廃業にかかる費用

会社の廃業にかかる費用

会社を廃業するときには、さまざまな手続き、および費用が必要になります。個人事業主の場合、廃業するときに費用がかからないケースもありますが、法人化している場合には、諸経費を支払わなければいけません。事業や会社の規模や状況によって必要な費用には差がありますが、廃業するときもお金がかかることを覚えておく必要があります。

廃業にかかる詳しい費用の内訳を説明します。

登記の費用

会社廃業の際には、3つの登記の費用がかかります。まず、解散登記です。これは、会社が解散、廃業したときに2週間以内に解散登記をしなければいけません。その際に発生するのが登録免許税で、法人の解散登記の場合30,000円必要です。

次に、清算する会社を清算株式会社といい、一人〜二人の清算人を選任して登記する必要があります。清算人は、解散した会社のさまざまな生産手続を行う担当者であり、会社法478条1項の規定により原則的には取締役や定款で定める者、または株主総会の決議によって選任された者を選任します。

一般的には、会社を廃業するために法的な解散手続きを取る前に、株主総会を開いて解散を議決するための特別決議を議決します。解散するためには、半数以上の株主が出席した総会で、3分の2以上の承認を得なければいけません。解散が議決された場合、会社の財産を整理する清算人も株主総会で選出します。もしも清算人になる人がいない場合は、裁判所が利害関係人の申立てによって、清算人を選任します。

清算人が選任されたときにも、指定の期間内に清算人登記をする必要があります。この登記免許税が9,000円かかります。さらに、清算会社の清算が終了した段階で、清算結了登記をしなければなりません。こちらは登録免許税が2,000円かかります。廃業の登記費用は合計して41,000円ほど必要です。

官報への公告費用

清算会社が解散したあとは、官報で解散と債権申出に関する事項について公告する必要があります。官報の公告は、1行につき税込で3,589円の費用がかかります。解散公告は通常9~11行ほどです。そのため約32,300~39,500円の支払いになります。

各種書類の準備費用

登記を行う前とあとで、さまざまな証明書が必要になります。これらの必要書類を揃えるためにも費用がかかります。必要な証明書は、商業・法人登記情報、登記事項証明書などで、会社の情報を得るために準備します。商業・法人登記情報は1通334円、登記事項証明書は2通でおよそ960〜1,200円ほどになります。また郵送代金も別途かかります。

弁護士費用

会社を廃業するためには、さまざまな書類や専門的な手続きが必要です。これらの手続きを個人で行うのは大きな負担になります。滞りなく廃業の手続きを進めるためにも、弁護士や税理士など知識と経験のある専門家に依頼して廃業手続きを代行してもらうのが一般的です。

廃業や解散、清算に関する専門家への報酬は、依頼する専門家や事務所などによっても違いますが、600,000円〜700,000円ほどになります。

設備や在庫などの処分

廃業する業種にもよりますが、抱えている在庫や設備を処分する費用も必要です。廃業しても在庫の量が多いままだと、確定申告による税負担が大きくなってしまいます。そのため廃業するときは、一般的にまとめて在庫を処分します。多くの在庫を一度に処分するためには、仕入れ値よりも安い価格で売ったり、処分しきれなかった在庫を引き取ってくれる業者に依頼したりすることになります。業者に処分を依頼する場合には、費用が必要になることもあります。

また、事業活動を行ううえで必要であった設備や機械なども、廃業の際に処分しなければいけません。同業他社などにうまく引き取りの段取りができれば買取してもらえますが、設備や機械自体が老朽化して売れないものや、機密情報が含まれているものなどは、処分するしかありません。専門の業者に依頼して廃棄費用を支払います。

廃棄処分の費用は、どの業者を選ぶかによっても変わりますが、トラック1台分で約数万円〜が目安です。事業規模が大きい場合は、廃棄の費用も高くなります。中には1,000万円以上必要になるケースもあるので、業者に見積もりをしてもらい、なるべく安く処分できる方法を探しましょう。

原状回復のための費用

賃貸物件を借りて事業活動を行っていた場合は、廃業したあとに原状回復して物件を引き渡さなければいけません。そのための費用も必要です。原状回復は、一般的に一坪あたり数万〜10万円ほどかかるとされています。借りている事業所の面積が大きければ、その分費用も高くなると考えておいた方がいいでしょう。さらに、設備の位置を変えたりダクトを取り付けたりしている場合は、それらを戻す費用も別途かかります。

個人の保有する建物や自宅などで事業活動を行っている場合は、物件の原状回復費用は必要ありません。

会社の廃業タイミング

会社の廃業タイミング

会社を廃業しようと考えるタイミングはいくつかあるでしょう。経営者であれば、廃業は極力避けて事業活動を継続したいと考えるものですが、さまざまなままならない事情により廃業を決断するケースがあります。

債務が超過したとき

会社の経営が債務超過したとき、廃業を決めるタイミングの一つです。債務超過は、会社の負債が資産の総額を上回ってしまった状態をいいます。債務は、買掛金や未払金などの短期的な支払いだけでなく、長期にわたって返済する銀行からの借入金などさまざまです。しかし、負債総額が資産総額を上回ってしまうと、期限内の支払いなどが難しくなり、経営危機に陥る可能性が高くなります。

すでに銀行から借入をしていて債務が残っている場合は、新たな借入が難しくなるので、このタイミングで廃業を決める企業も少なくありません。

経営者が高齢化した

経営者が高齢化したことで、廃業を考えるケースもあります。会社設立当時は、若くて気力も体力もあり精力的に事業を行っていた経営者でも、高齢になるにつれてビジネスの第一線で活動することや経営上の重要な判断を的確に下すこと、時代の変化の流れを敏感にキャッチして柔軟性のある経営を行うことが難しくなってきます。

現時点では会社経営を続けられても、この先も業績を右肩上がりで伸ばせるとは限りません。元気なうちに自分の手で廃業することを考えるようになります。経営にゆとりがある時点で廃業すれば、会社を清算しても老後の資金を残せると試算するのです。

また経営者の高齢化以外にも、突然経営者が事故に遭ったり重大な病気になったりして経営の指揮を取れなくなった場合も、廃業するきっかけになることがあります。

後継者がいない

経営者が高齢になったときに後任に適した人材がいない場合も、会社の廃業を考えるタイミングになります。経営者に子どもがいない、または子どもがいても事業の継承をしないケースや、社内の役員または社員の中に後継者の適任がいない場合、また後継者を確保できても、引き継ぐときの資金的な問題がネックになり廃業を選択することもあります。

今後日本も少子高齢化はますます進むため、後継者不足に悩む企業や経営者は増えていくでしょう。

M&Aがうまく進まない

事業継承または技術の継承などの理由でM&Aを選択する企業も少なくありません。M&Aは敵対的買収だけでなく、このような会社維持や事業継承の方法としても注目されています。しかし、M&Aで事業活動を継続しようとしても、必ず成功するわけではありません。M&A仲介会社などを通して買い手を探しても、なかなかマッチングしないケースも多くあります。

またマッチング後も、売却金額や売却条件の折り合いがつかない、売り手が抱えている赤字を改善するまでに時間がかかりそうで相手が難色を示している、現社長が事業活動に深く関わっていたためトップが変わると同じように安定した経営ができない可能性がある、などさまざまな理由でM&Aがうまく進まないこともあります。

事業継承のためにM&Aを進めてみたけれど、難航が続くいたことで廃業も視野に入れる経営者が増えていきます。

会社の廃業手続きの流れ

会社の廃業手続きの流れ

会社を廃業するときの手続きの流れを見ていきましょう。

営業終了日を決定

営業終了日は、廃業に関するさまざまな手続きを踏まえて数カ月先に設定するのが一般的です。営業終了日が決まったら、取引先や関係者などに、廃業を伝える文書を送ります。

株主総会で承認を得る

営業終了日が決定したら、株主総会を開いて特別決議で廃業の承認を取ります。株主の過半数が出席して、2/3以上が賛成する必要があります。この際に清算人を定款で定めていない場合、清算人の選定もあわせて行います。

解散決議後、解散登記・清算人登記を行う

解散決議で廃業が決まってから2週間以内に、管轄の法務局で解散登記を行います。

財産目録・貸借対照表の承認

清算人が解散するときの財務目録とそれをもとに貸借対照表を作成します。残っている財産を株主が把握できるよう、株主総会で作成した財務目録と貸借対照表について承認を得ます。

廃業(解散)の届出をする

解散登記のあとに都道府県の税事務所、所管の税務署、市町村の役所に届出を行います。また、廃業で社員の解雇もしなければいけない場合は、労働局または労働基準監督署や社会保険事務所へ届け出もします。

官報で解散公告

官報で解散公告を行います。公告掲載期間は2カ月以上になります。

清算人による清算

清算人が残る財産を調べ、債務弁済をしてさらに財産残れば株主へ分配します。

解散日の翌日から2カ月以内に解散確定申告をする

解散の翌日から2カ月の間に、事業年度の始まりから解散した日までの解散確定申告をします。

債務の弁済・分配、清算確定申告

会社に残る資産が確定し、債務の弁済・株主への分配を終えてから、財産確定日を事業年度終了とする確定申告を行います。清算確定申告は、残った資産が確定してから1カ月以内です。

清算決算報告書の承認

財産の清算と清算確定申告を終えたら、清算の決算報告書を作成し株主総会で承認を得ます。

株主総会後、法務局で清算結了登記を行う

株主総会の承認日から2週間以内に法務局で清算結了登記を行います。

会社の廃業にかかる期間

会社の廃業にかかる期間

会社廃業の手続きを見てもわかるように、廃業するまでにはさまざまな手順を踏んでいかなければいけません。弁護士や会計士などに依頼してサポートしてもらっても、会社廃業までにはかなりの時間がかかると考えましょう。

会社法で、債権者保護手続きに2カ月要すると決められています。また、官報で解散の公告を2カ月掲載するため、公告を掲載後2カ月間は清算結了はできません。廃業は最低でも2カ月以上かかります。

会社の廃業のポイント

会社の廃業のポイント

会社廃業のポイントは、経営者自らが決断できるという点です。倒産や破産のように、負債が大きくなり債務超過したり、事業の継続が難しくなったりする前、余力のある段階で廃業するかを決められます。すべての財産を失わず、廃業後新たな事業を始める資金を準備することや当面の生活資金を確保することも可能です。事業継承の不安要素が出てきた時点で、廃業の道もあわせて検討することで、ダメージを少なくし、最善の道を選択できるでしょう。

会社廃業では社員への退職金の支払いはどうなる?

会社廃業では社員への退職金の支払いはどうなる?

廃業する理由はさまざまですが、経営状況の悪化が原因で廃業する場合でも、雇用契約、労働契約、就業規則などで退職金制度を設けている会社であれば社員への退職金の支払い義務があります。しかしこれらの契約や規則で退職金制度がない場合は、廃業しても社員に退職金を支払う必要はありません。

ただし、廃業するときは、契約していた社員は解雇します。その際に退職金ではなく、解雇予告手当が支払われます。解雇予告手当は次のように計算されます。

1日の平均賃金×解雇日までの期間(30日に不足する日数)

経営状況悪化で廃業するケースの場合、退職金の支払いに関するトラブルがとても多くなりますが、雇用契約や就業規則などを確認する必要があるでしょう。

廃業以外に検討できる方法

廃業以外に検討できる方法

会社を廃業する以外の選択肢はいくつかあります。廃業してしまうと会社を清算し消滅させなければいけません。廃業を選ぶ前にそれ以外の会社を残す道を選べるかどうか十分に検討してみましょう。

会社休眠

会社を廃業するのではなく休眠会社にするという選択肢もあります。さまざまな理由で経営難に陥っても、安定した取引先があるような場合には、会社休眠で難を逃れられる場合があります。会社休眠ができるのは、株式会社であり、最後に登記をした日から12年以上が経過している、税務署などに所定の手続きをした企業です。

通常、株式会社は10年に1回役員変更の登記をしなければいけません。しかしこれを行っていない企業の場合、休眠とみなされます。また役員登記を行っていても、必要な手続きを取れば一定期間会社を休眠できます。

会社休眠には、法人税や消費税が発生しない、自治体によっては法人住民税の均等割が免除、事業再開時に認可を取り直す必要がないなどのメリットがあります。また会社休眠をしても、所定の手続きを取ればいつでも事業を再開できます。

M&A

M&Aで、事業再建する際のスポンサーを見つける方法もあります。最近は事業継承のためのM&Aを行う企業も増えています。M&Aのやり方はさまざまで、株式や事業の一部を買い手に譲渡する形で援助してもらう方法、資金面の援助だけを受けて経営は今までと同じ経営者が続ける方法などもあります。

売却の金額や条件などはケースバイケースなので、マッチングしてから話し合いを詰めていく必要があります。M&A仲介会社なら豊富な実績やナレッジがあるため、それぞれの売り手の状況や希望などを詳しく聞いて、ベストな買い手を探してくれます。また条件の交渉なども代行してくれるので、経営者自らが事業継承のためにさまざまな手続きや交渉を行う必要がなく、経営だけに集中できます。

M&A相談ならウィルゲートM&A

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まとめ

まとめ

会社廃業には、さまざまな費用がかかります。また手続きもいろいろありそれぞれ期間が限定されているので、廃業が決まったらスピーディーに解散手続きを進めていかなければいけません。廃業してしまうと事業すべてがなくなりますが、支援パートナーを見つけて企業を存続させる道もあります。

ウィルゲートM&Aは、相談料、着手金などは無料、完全成功報酬型で、M&Aが成功した場合のみ報酬を支払えばいいので、気軽に相談できます。会社廃業の前にM&Aもぜひ検討してみましょう。

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