【2022年】学習塾・予備校業界のM&A動向・事例・売却相場を解説

【2022年】学習塾・予備校業界のM&A動向・事例・売却相場を解説

近年、学習塾・予備校業界におけるM&Aが増加しています。

この記事では、学習塾・予備校業界のM&Aの最新動向や学習塾・予備校運営企業のM&Aを行うメリット・デメリット、売却を成功させるポイントや注意点、代表的なM&A事例などを紹介します。

学習塾・予備校業界の概要

学習塾・予備校業界の概要

日本国内のさまざまな業種でM&Aが昨今増加傾向にありますが、学習塾・予備校業界においても、取り巻く環境の変化に対応するべくM&Aが行われています。

そもそも学習塾・予備校業界とはどのような形態を指すか、また現在の市場規模や市場動向、学習塾・予備校のビジネスモデル、学習塾・予備校を運営企業の一例を見ていきましょう。

学習塾・予備校運営企業とは

学習塾・予備校運営企業とは、義務教育、または高等教育以上の児童・生徒を対象に、学校教育以外の学習指導・進学指導を実施する教育施設、またその施設を運営する企業を指します。

厳密には、小学生から高校生に向けて学習指導・受験指導を行う学習塾と、高校生や高卒生を対象に大学受験に特化した予備校では、指導の目的や対象となる生徒の年齢が異なります。また個別指導の教室と集団指導が中心の教室とでも、企業ごとに特性は違います。

学習塾・予備校業界の市場規模や市場動向

少子化の影響もあり、2018年度以降、小学生、中学性、高校生それぞれの在学者数が減少し続けているといわれており、学習塾・予備校業界全体で顧客層の人口減少、市場規模の縮小が予測されています。

ただ、学生の数は減ってはいるものの、上級の学校への進学率が上昇していることもあって、市場ニーズは少なからず増加しています。

個々の生徒に合わせた指導ができる個別指導へのニーズが高まっており、集団指導が主流の大手企業でも、個別指導を積極的に採用し始めています。個別指導には個別で対応できる教室と講師が必要となりますが、固定費がかかることもあり、人件費を削減するために、アルバイトで講師を雇用する対策が取り入れられています。

近年では、個別指導塾を中心にフランチャイズ化が進行しています。

参考:学習塾・予備校市場に関する調査を実施(2021年)

学習塾・予備校業界のビジネスモデル

学習塾・予備校業界では、企業が従業員である講師を雇用して、顧客である生徒に授業を提供するのがビジネスモデルです。授業で使用する授業形式や授業方針、テキストなどは塾・予備校によって異なり、生徒の理解度や学力に合わせた指導が受けられます。

受験合格を目的とした予備校や進学塾と、学校の授業をフォローしてもらえる学習塾があります。特別な許可・認可や、多くの開業資金を必要としないことから、自宅などに教室を設けて学習塾を開校する個人事業節が増えています。賃料も抑えられ、発生する費用は人件費ぐらいなこと、授業料が前払いということもあり、比較的資金繰りが良い企業が多い傾向にあります。

最近では、個別指導や集団指導の他に、タブレットやプリントを使った自習で、わからないところや学習の進め方を相談する自立型指導といったビジネスモデルも増加しています。

学習塾・予備校運営企業の一例

学習塾・予備校を運営する企業の一例を紹介します。

  • ナガセ(東進ハイスクール・四谷大塚)
  • リソー教育(進学個別指導塾TOMAS)
  • 東京個別指導学院
  • 京進
  • 明光グループ(明光義塾・早稲田アカデミー個別進学館)
  • ウィザス(第一ゼミナール)
  • 市進ホールディングス(市進学院・市進予備校)
  • 成学社(開成教育セミナー・個別指導学院フリーステップ)
  • 河合塾グループ
  • 駿河台学園(駿台予備学校)
  • 高宮学園(代々木ゼミナール)
  • スプリックス(個別指導塾森塾)
  • 進学会ホールディングス
  • 学研ホールディングス
  • 秀英予備校
  • ベネッセホールディングス(進研ゼミ)

学習塾・予備校業界のM&A最新動向

学習塾・予備校業界のM&A最新動向

学習塾・予備校業界は少子化による生徒数の減少などで市場規模の縮小が懸念される中、一人あたりにかけられる教育費や受験を考える保護者の増加などで、教育産業市場全体の売り上げ規模は微増が続いています。

ただ近年では学習塾・予備校業界だけではほぼ横ばいの規模で推移していますが、少子化だけではなく、新型コロナウイルスの影響もあって、今後緩やかに縮小していくと予測されています。

多くの学習塾・予備校企業が他社との差別化を図るべく、需要の高い個別指導や動画学習事業、通信教育事業への参入を進めており、学習塾・予備校間での競争はより激化していくと考えられます。

また、首都圏の大手学習塾・予備校と比べ、厳しい状況が続く地方の中小企業の問題や、学習塾・予備校の経営者の後継者・事業継承問題なども増加しているため、これらの問題を解決するためのM&Aも多数行われているのが現状です。

学習塾・予備校運営企業をM&A・買収・売却するメリット

学習塾・予備校運営企業をM&A・買収・売却するメリット

学習塾・予備校運営企業をM&A・売却する目的は、後継者問題の解決、有能な講師の不在、在宅で学習可能なサービスの急増による将来性の不安、多様化するニーズへの対応などが挙げられます。

M&Aを行う目的が叶った場合、学習塾・予備校運営企業をM&A・買収・売却することで得られるメリットを売り手、買い手別々の視点から確認しておきましょう。

学習塾・予備校運営企業をM&A・売却するメリット

学習塾・予備校運営企業をM&Aする売り手のメリットとして以下の点が挙げられます。

1.企業価値を高く見積もられやすく高く売却できる傾向にある
2.売却後も従業員の雇用が守れる
3.有力グループのもとで教務レベルの向上と安定的な事業経営が図れる
4.生徒に迷惑かけずにスムーズに事業を引き継げる
5.後継者・事業承継問題が解決できる

学習塾・予備校というビジネスモデルは、顧客ニーズに寄り添った経営ができれば、安定的に収益を発生させられる事業のため、ほかの業種と比べても、高い値段で売却できる特徴があります。企業譲渡後でも、講師の雇用は継続され、経営者が講師を兼ねていた場合は、創業者利益が確保できるうえに、塾講師として働き続けることも可能です。

また、M&Aで事業継承することで、経営者が抱えていた個人保証や担保などの負債も譲受企業が引き継ぐため、引退後も安定した生活が送れるといったメリットもあります。

学習塾・予備校運営企業をM&A・買収するメリット

学習塾・予備校運営企業をM&A・買収することで得られる買い手のメリットは以下の通りです。

1.講師と生徒を一括で確保できる
2.好条件の立地が取得できる
3.事業エリアを拡大してスケールメリットが享受できる
4対象企業が持つノウハウや教材、指導力などが取り込める

一から生徒や講師を集めるとなると、コストや時間がかかってしまいますが、M&Aで学習塾・予備校を買収できれば、生徒や講師はもちろん、長く培った評価や信頼もそのまま獲得できるわけです。また、学生向けの学習塾や予備校は、駅や学校の側の好条件の場所に立地している場合が多く、新規参入では勝ち得なかったような立地の良い場所を抑えることも可能です。

それら条件の良い立地を足掛かりに教室数を増やしていき、事業の規模を拡大していければ、知名度の向上や広告費用の削減といったスケールメリットも享受できます。

ほかにも、学習塾・予備校事業は他業種との親和性が高いこともあり、教育業界へ新規参入を目指す他業種にとってもチャンスといえます。すでに顧客がいるビジネスモデルでは、収益の見込みが立てやすく、IT企業が譲受した場合、学習塾のオンライン化を進め、対面以外でも、さまざまなレッスンを提供し続けられます。

学習塾・予備校運営企業の売却金額の相場

学習塾・予備校運営企業の売却金額の相場

学習塾・予備校運営企業のM&Aでは、講師の質や生徒数、設備、立地などが売却金額を決める要因になります。教室の大小にかかわらず、比較的小さい規模でも事業を行うことが可能です。中小企業であれば、講師もアルバイトや高齢者、主婦でまかなえることがあり、人件費が抑えられることも費用相場に影響してきます。

生徒数を多く抱えて、合格・進学実績が豊富、また駅近くに立地しているなど、交通の便が良い場所に塾を構える企業の方が取引価格は高くなります。中小の学習塾・予備校だと、およそ3,000~7,000万円ほどとされており、多くは1億円未満でM&Aが行われています。

また、特に地方の特定の地域だけで多数教室を運営するような企業であれば、数億~数十億円といった価格帯で譲渡・売却が実施されているケースもあります。ほかにも大手企業のM&Aでは、100億円で取引されたM&A事例も見受けられます。特に人材不足に悩む企業が多いこともあって、優秀な正社員の講師がいる企業の売却では、売買価格が高くなる可能性があります。

学習塾・予備校運営企業の買収を成功させるポイント

学習塾・予備校運営企業の買収を成功させるポイント

学習塾・予備校運営企業をM&Aする際には、生徒獲得を左右する講師の労務問題を解決しておく必要があります。学習塾・予備校の最大の資産といえるのが、有能で生徒や保護者からの信頼が厚い講師であり、この講師が離脱してしまうようだと、生徒も辞めてしまいます。

M&Aにより売却された会社に所属していた講師は、今後の待遇に関いて不安を抱えているため、個別面談を行うなどして、一人ひとり丁寧に不安を取り除いていくことが肝心です。講師の中には経営者の経営方針や人格、熱意などに惹かれてその塾で働いていることがあるので、買収後の離職を抑止するためにも、新たな経営方針や経営者についてきちんと説明する機会を設けるようにしましょう。

学習塾・予備校運営企業をM&Aする際の注意点

学習塾・予備校運営企業をM&Aする際の注意点

M&Aを行う譲受企業は、譲渡企業が持つ負債や未払い賃金といったリスクはできるだけ避けたいと考えています。そのため売り手は自社が持つ潜在的なリスクをしっかり精査して、顕著なリスクが発覚した場合は、売却額の低下や契約自体の破断を招かないよう前もって改善しておくとよいでしょう。

ほかにも税金対策を怠ってしまうと、多額の税金が発生し、売買費用の多くが税金で引かれてしまう危険性もあります。譲渡企業には消費税がかかる場合があり、譲受企業には登録免許税や不動産取得税などの税金が発生します。

できるだけ税金を抑えるためには、株式譲渡や第三者割当増資を利用するのがおすすめです。

学習塾・予備校業界のM&A事例6選

学習塾・予備校業界のM&A事例6選

学習塾・予備校業界の代表的なM&A事例5つ紹介します。M&A事例を参考にすることで、M&Aの目的や取り巻く背景、用いられた手法などについてイメージが深められるでしょう。

株式会社ベネッセホールディングス

ベネッセホールディングスは、首都圏、関西圏を中心に「こども英会話のミネルヴァ」を約400教室展開する「株式会社ミネルヴァインテリジェンス」の発行済全株式を取得する株式譲渡契約を、2014年11月に締結しました。

ベネッセホールディングスの教育事業子会社である「株式会社ベネッセコーポレーション」は、子ども向け英会話教室を1,400ほど全国に展開し、「ベルリッツ・ジャパン株式会社」も、幅広い年齢層に向けて英会話・語学学校を運営しています。

英語教育の強化が望まれる中、子会社であるベネッセ、ベルリッツ、ミネルヴァ3社がそれぞれ持つ英語教育のノウハウや教材、拠点を融合。全体の拠点数を増やしながら、エリア単位で多様な教育を展開していくことを目指し、M&Aを行いました。

学研ホールディングス

学研ホールディングスは、グループ傘下の「株式会社学研塾ホールディングス」を通じて、2017年11月に、山梨県が地盤の「文理学院」の発行済株式をすべて取得すると発表しました。

文理学院は、静岡県と山梨県に小・中・高校生向けの塾や予備校を30教室運営する中堅塾。学研ホールディングスは、このM&Aを実施することで、これまで手薄だった甲信越・東海エリアへの進出を図るとともに、同社が持つ経営的能力や収益力、文理学院が確立する生徒指導力や社員育成力などに関するノウハウを互いに共有して、グループ塾間のシナジー創出を目指しています。

学研ホールディングスは、2006年に「あすなろ学院」を運営する東北ベストスタディ株式会社、2007年に兵庫県が地盤の株式会社ホットライン(現学研アイズ)を買収するなど、学習塾事業者のM&Aを積極的に行っています。

株式会社明光ネットワークジャパン

明光ネットワークジャパンは、「株式会社ケイ・エム・ジーコーポレーション(現株式会社TOMONI)」の全株式を2018年12月に取得し、完全子会社化することを決定しました。

ケイ・エム・ジーコーポレーションは日本全国に2,000教室以上展開する「明光義塾」のフランチャイジーで、京都府、滋賀県、奈良県で43教室を運営しています。ほかにも、同年4月には首都圏、東海地域で塾を運営する株式会社ケイライン、2021年には九州に複数の教室を展開する株式会社クース・コーポレーションといったフランチャイジーを子会社化しています。

フランチャイズ運営の企業を子会社にすることで、グループ全体の競争力強化を推進し、企業価値向上を目指しています。

城南進学研究社

城南進学研究社は、「株式会社アイベック」の株式70%を2018年8月に取得し、子会社化することを決議しました。

城南進学研究社は、首都圏に現役高校生向けの「城南予備校」や個別指導塾「城南コベッツ」などを展開しています。アイベックは、企業向けビジネス語学研修やビジネス英語、TOEIC対策講座などが学習できる英会話スクールの運営を行う企業です。

今回アイベックを子会社化することで、社会人向けの教育事業にも本格的に乗り出すことになり、自社が持つ教育事業との相乗効果で、幅広い年齢層を網羅した総合教育ソリューション企業として発展することを期待しています。

株式会社ナガセ

「東進ハイスクール」などを運営する学習塾大手のナガセは、株式会社サマデイが運営する早稲田塾事業の会社分割により新設された「株式会社早稲田塾」の発行済全株式を2014年12月に取得し、子会社化することを発表しました。

早稲田塾は現役高校生向けの大学受験塾・予備校で、AO・推薦入試対策の塾としてはトップクラスの実績、ブランド力を誇ります。少子化による学齢人口の減少や競争が激化する塾業界の現状に鑑みて、両社のノウハウやブランド力を共有して、グループの総合力・競争力の強化を目指し、M&Aを実施。

ナガセは積極的にM&Aを行っており、2006年に中学受験塾の株式会社四谷大塚、2008年に水泳教室「イトマンスイミングスクール」運営のアイエスエス株式会社をグループ会社化しています。

株式会社京進

京進は「京進スクール・ワン」や「ユニバーサルキャンパス」などの学習塾・英会話教室を運営するかたわら、日本語学校の経営も行っています。2019年1月に、都内で日本語学校を運営する「株式会社ダイナミック・ビジネス・カレッジ」の発行済全株式を10億5千百万円で取得して、連結子会社化することを発表しました。

京進グループは日本の大学や専門学校などに進学する留学生向けの日本語教育事業を行っていますが、今回のM&Aを通して、全国に日本語学校数を一気に増やすことに成功。

両社が持つノウハウやリソースを共有することで、日本語教育事業の強化はもちろん、その他語学関連事業とのシナジー効果を期待しています。

学習塾・予備校運営企業をM&A・売買する方法

学習塾・予備校運営企業をM&A・売買する方法

学習塾・予備校運営企業をM&A・売買するには、株式譲渡や事業譲渡といった運営する企業、または教育関連事業を買収・売却する方法があります。株式譲渡でM&Aを行う場合、自社株式を譲渡企業に売却することで経営権も引き渡し、大手企業からの資本の提供やノウハウを共有するなどして、事業の継続とさらなる成長を目指します。

事業譲渡によるM&Aでは、学習塾・予備校事業のみを売却するため、法人格を残したまま、中枢事業や新事業に注力する目的で利用されています。

会社売買・M&A相談ならウィルゲートM&A

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9,100社以上の経営者とのネットワークを持つことから、素早い買い手企業候補の企業とのマッチングを可能にします。今まで多くのM&A仲介を通して培ってきた経験と知識を活かして、Web・ITのほかにも、さまざまな業種のM&A支援を行ってきました。

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学習塾・予備校業界のM&A最新動向 まとめ

学習塾・予備校業界のM&A最新動向 まとめ

メリットの多い学習塾・予備校業界のM&Aですが、働く講師や塾・予備校に通う生徒が最大の資産ともいえるため、ケアを怠ればM&Aの効果が期待できないばかりか、最悪の場合経営の悪化を招くリスクが発生する可能性もあります。

M&A仲介、事業継承を検討されている場合は、学習塾・予備校のM&Aに精通したアドバイザーが豊富なM&A仲介会社にサポートを依頼するのも一つの方法です。M&Aを円滑に進めていくためにも、「ウィルゲートのM&A」にまずは無料でお問い合わせください。

ウィルゲートM&Aは、事業売買の仲介実績が豊富で、9,100社以上の会社と独自のネットワークを形成しているM&A仲介会社です。完全成功報酬型で相談料や着手金も無料なので、これからM&Aを検討している方は、ぜひウィルゲートM&Aにお問い合わせください。

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