次のステージに進む選択肢がM&Aだった。譲渡先との高いシナジーで更なる飛躍を目指す
- 売却した会社
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株式会社And Technologies 様
- 買収した会社
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株式会社みらいワークス 様
「人生100年時代」のキャリア形成を考えるメディア「FIND CAREERS」
株式会社And Technologiesの勝木健太さんは、銀行、コンサルティングファームでの勤務を経て、2019年8月に「FIND CAREERS」をリリース。1年ほどで黒字化を達成し、次の展開に進みたいとの想いから、M&Aを検討しました。本件成約までの道のりや今後の展望について、両社代表のお二人にお話を伺いました。
銀行、コンサルティングファームを経て、And Technologiesを創業
御社の創業の経緯を教えてください。
勝木氏:
新卒で金融機関に入社し、現場で法人営業を経験した後、本部で企画業務を担当しました。4年間勤務した後、コンサルティングファームに転職しました。
その後、監査法人のアドバイザリー部門に転職してFinTech関連のコンサルティング業務に携わった後、フリーランスのコンサルタントとして独立しました。
実は、独立時にみらいワークスが運営する「フリーコンサルタント.jp」で案件を受けていました。最初の1年間は受託業務に注力し、そこで蓄えたキャッシュを元に、株式会社And Technologiesを立ち上げました。
「FIND CAREERS」が伸びた要因はどのような点にあるのでしょうか。
勝木氏:
1つは早い段階からドメインの信頼性を強化する施策に注力していたこと。もう1つはサイトデザインへのこだわりです。創業初期に大学時代の後輩から優秀なデザイナーの方を紹介してもらえたことが非常に大きかったと思います。
次の展開に進みたいという想いから、M&Aを検討
今回、「FIND CAREERS」のM&Aを検討するに至った経緯を教えてください。
勝木氏:
ウィルゲートさんとは別のM&A仲介会社様から「ある上場企業様がサイト買収に興味を持っています」とご連絡をいただいたことがあり、それをきっかけにM&Aという選択肢を視野に入れるようになりました。
ウェブメディアはM&Aが比較的成立しやすい事業形態とは聞いていましたが、まさか収益化して1年も経っていない私のサイトに声がかかるとは思っていませんでした。
それなりに収益も出ていましたが、それでもM&Aすることに決めたのは、今まで見たことのない景色をもっと見たい、次の展開に進みたいと考えていたからです。
M&Aをする中で、悩まれた点や困った点はありましたか?
勝木氏:
私個人としては初めてのM&Aだったこともあって、どのように交渉が進むのかという点と売却の条件がどうなるのかという点で少し不安はありました。しかし、担当者の方にしっかりとサポートいただいたおかげで、円滑にディールを終えることができました。
数ある会社の中から、みらいワークスさんを選ばれた理由は?
勝木氏:
最も大きな理由は直感ですね。みらいワークスという企業に対してはフリーランスの頃から個人的に良い印象を抱いていましたが、今回改めて代表の岡本さんと取締役の池田さんとお話しさせていただいて、波長が合うと感じました。
また、代表の岡本さんが積極的に関わってくださったこともあり、M&A成立に至るまでの意思決定が早いと感じたことも決め手となりました。
みらいワークス様と今後歩んでいきたい未来について聞かせてください。
勝木氏:
FIND CAREERSだけではなく、その他の事業でも自分がこれまでに培ってきた知見を生かして様々な分野に挑戦することで、ビジネスパーソンとしての幅を広げたいと考えています。
まずはFIND CAREERSをさらに成長させることが私に課せられた目下のミッションだと思うので、事業成長に引き続きコミットする所存です。
「プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する」というビジョンに向けたM&A
引き受け先となったみらいワークスについてご紹介いただけますか?
岡本氏:
みらいワークスは、大きく3つの事業を運営しています。
1つ目は、当社の主力事業であるFCエージェント事業で、プロフェッショナルなフリーランスに特化した人材マッチングサービス「FreeConsultant.jp」を運営しています。
2つ目が、Webプラットフォーム事業です。これはその通りウェブ上で人材をマッチングさせる事業で、主に地方創生をテーマとして展開しています。
サービスとしては、東京の副業プロ人材と地域の中小企業をマッチングする「Skill Shift(スキルシフト)」、 転職移住したい東京のプロ人材と地方をマッチングする「Glocal Mission Jobs(グローカルミッションジョブズ)」という2つのマッチングプラットフォームを運営しています。
3つ目が、大企業や自治体の課題を解決するソリューション事業です。「オープン・イノベーション・ソリューション」では、大企業のアクセラレータープログラムの運営を支援をしており、アライアンスによる新規事業創出などを推進しております。また、「100年人生・HRソリューション」では、45歳以上の人材のセカンドキャリア構築のための制度設計から運用支援までをトータルにサポートしており、シニア人材の方々へ多様な働き方についての情報提供に加え、Skill Shift(スキルシフト)、Glocal Mission Jobs(グローカルミッションジョブズ)、Glocal Mission Times(グローカルミッションタイムズ)などを活用して、地域課題の解決に取り組んでもらい、強みややりたいことを見つけてもらうような取り組みとなります。
御社はこれまでいくつものM&Aをされてきたそうですね。M&Aの方針について教えてください。
岡本氏:
弊社の「プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する」というビジョンに資するかどうかが、最も重要なポイントです。
これまで実施した2件のM&Aも同様です。その当時、地方創生という文脈で事業を展開しておらず、ゼロから地方とのコネクションを作るよりも、Skill ShiftやGlocal Mission Jobsなど、すでにあるプラットフォームと組んだ方が良いと考えていました。またSkill Shiftは、内閣府が関係人口創生の政策を検討するときのモデル事業となっており、政策のど真ん中をいくサービスであることも決め手となりました。
Glocal Mission Jobsは、内閣府管轄の官の組織の日本人材機構が運営していた事業でした。行政の事業を民間が引き継ぐことは意義深くプレッシャーも大きいですが、責任感を持って引き継がせて頂いております。
「FIND CAREERS」のM&Aを検討した経緯や背景について伺えますか?
岡本氏:
創業よりプロフェッショナル人材に特化した事業展開をしてまいりましたが、最初はフリーランス向けの事業からスタートし、プロ人材の転職、プロ人材の副業と、働き方の支援の幅を広げて参りました。そして、さらに多くのプロフェッショナル人材の活躍の場を広げたいと思ったときに、より多くのプロ人材の方々への認知を集めないと強いプラットフォームにならないと感じていました。
そんなときに、今回のご縁をいただきました。当時のみらいワークスでは出来ないやり方でプロ人材にリーチできる、エコシステムに足りないパーツを補完できると感じ、M&Aを検討しました。
今までの中でもディールサイズとして最も大きいM&Aだったとお聞きしていますが、ディールが成立するまでの不安や印象深いことがあればお伺いしたいです。
岡本氏
不安はそこまでなかったですね。ただ、大きい金額であったため、条件面の確認やデューデリジェンスなどは慎重に行いました。取締役会では、さまざまな意見が飛び交いましたが、日頃より、「何のために我々は事業をしているのか」というビジョンを共有していたので、And Technologiesさんがビジョンの実現にどう貢献いただけるのか、実現をどのくらい加速させることができるか、という部分で比較的スムーズに合意が取れました。
AndTechnologiesさんの印象や「FIND CAREERS」をM&Aする決め手は?
岡本氏
「うまくできているサイトだなぁ」と感心したのが最初の印象です。M&Aの決め手としては、勝木さんと波長が合ったのが大きいですね。
ロジックと感覚のバランスが優れていて、コミュニケーションがとりやすいです。やはり、M&Aにおいてはトップ同士の感覚が合うかが非常に重要だと思っていて。
今まで、弊社では2回ほどM&Aを経験しましたが、Skill Shiftは合弁会社を立ち上げた後100%吸収合併、Glocal Mission Jobsは事業譲渡でしたので、法人を譲受するのは今回が初めてでした。2つのM&Aでも、事業責任者は一緒に来てくれましたが、1人社長の会社のM&Aともなれば、相性は非常に重要だなと思っています。勝木さんがみらいワークスの執行役員に就任し、「FIND CAREERS」以外の事業推進にもコミットする意向を示してくれたのも決め手となりました。
ディールを終えて、一緒に働き始めているところだと思いますが、今の率直な感想を教えてください。
岡本氏
まだ1ヶ月ではありますが、さまざまな話を勝木さんとさせていただくと、今後のイメージや新しいビジネスアイデアが出てきやすいですね。事業の拡大や、ビジョンの実現が加速する確信がより高まったというか、実感が得られました。これからますます期待できるかなと感じています。
AndTechnologiesさんに期待していることや今後の展望などがあればお伺いしたいです。
岡本氏
勝木さんご自身のノウハウや会社で実践してきたことを、弊社の他事業にインストールして、事業を伸ばしてくれることを期待しています。ただ、もちろん勝木さんに任せっきりにせずに、共にその事業を伸ばす想いです。
今後の展望についてですが、引き続き「プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する」というビジョンに資する会社のM&Aを検討したいと思います。
例えば、我々は大企業の人事部など、人にまつわる様々なコネクション先を持っているため、タレントマネジメントシステムやSaaS系のサービスなど、大企業の人事向けの HR ソリューションとは親和性が高く、事業をグロースさせることができると思います。
理想としては、勝木さんのように当社の登録者の方とご一緒する事例が増えると良いですね。やはり、起業したばかりの創業期はキャッシュが回らなくて、フリーランスで得たキャッシュを事業に投資する方が多くいらっしゃいます。私自身もそうでした。
だからこそ、我々の事業から、そういった流れを作り出せたのは感慨深いですね。
M&Aを通して、立ち上げた事業をサポートできる会社になれば、弊社のサービスに登録している方々の、本当にやりたいことを実現できるかもしれません。
M&Aを終えて
今回M&Aを通じたウィルゲートの印象はいかがでしたでしょうか?
岡本氏
とにかく回答のスピードが速く、柔軟な対応をしてくれたのが印象深かったですね。経営者からすると、M&Aは人生をかける瞬間でもあるので、「そういうのはできません」みたいな杓子定規なコミュニケーションだと、どうしても不信感を抱いてしまう気がしていて。その点ウィルゲートさんは、単に「売って終わり」ではなくて、M&Aの後もフォローしてくれました。本当に会社のことを考えてくれていると感じましたね。
M&Aを検討している方や不安を持っている方に対して伝えたいことはありますか?
勝木氏
従業員や取引先が少なく、ビジネスモデルも非常にシンプルだったこともあって、デューデリジェンスは非常にスムーズに進みました。事業上の変数を減らすことを意識して、シンプルな会社経営に注力していたことがスムーズな売却に繋がったと感じています。
起業していきなりホームランを打つ必要はないと個人的には考えています。段階的に大きな事業を作っていくという考え方でも良いと思います。
とはいえ、ある程度の売上や利益が立っていないと売却はできません。特に1人会社では組織的なレバレッジをかけられません。私の場合は、検索エンジンを通じた集客の仕組みを活用したことで、ユーザー獲得においてレバレッジをかけることができました。ある程度の規模まで事業をスケールさせたいなら、何らかのレバレッジを意識的に設計することは必要だと思います。
岡本氏
M&A後のPMI(Post Merger Integration) に不安を感じるかもしれません。そもそも前提として、経営者が「購入したからうまくいく」というスタンスではダメで、経営者が体制を作ることにコミットして初めて、ビジネスのスピードが上がると思います。
これからM&Aを始めるなら、小さな規模からディールすることをおすすめします。まず小さいM&Aでディールの進め方やPMIの感覚などを学び、それを自分たちの力に変えていく。そうやって経験値を積むことが重要だと思いますね。